AI弁護士は無料で使えるのか — 法テラスとの違いを正しく理解する
多くのAI弁護士サービスは、実際に費用0円・登録なしで使える。ただし、その「無料」と法テラスの「無料」は中身がまったく違う。AIが無料でくれるのは法的情報、法テラスが条件付きでくれるのは法的支援そのものだ。

だからこの二つは「どちらが得か」を比べるものではない。役割が違う道具として、順番に使い分けるものだ。まずAIで状況を整理し、そのうえで法テラスや弁護士会という「人が動いてくれる窓口」に進む——この流れを理解しているかどうかで、相談の質が変わる。
本記事は一般的な法情報であり、法的助言(法律相談)ではありません。個別の判断は必ず弁護士にご相談ください。
結論 — 2つの「無料」はまったく別物
一目でわかる違い
| 項目 | AI法律相談 | 法テラスの無料相談 | 弁護士会の無料相談 |
|---|---|---|---|
| 費用 | 0円 | 条件を満たせば0円 | 窓口により異なる(資力を問わないものが多い) |
| 利用条件 | 基本的になし | 資力基準+民事法律扶助の趣旨に適合 | 分野・地域により異なる |
| 提供時間 | 24時間・即時 | 1回30分・予約制 | 予約制(対面が中心) |
| 得られるもの | 法的情報の提供 | 弁護士・司法書士による法律相談 | 弁護士による法律相談 |
| 回数上限 | サービスごとの利用制限あり | 同一の問題につき3回まで | 窓口により異なる |
AI法律相談は費用0円・24時間即時・匿名で使えるが、得られるのは「法的情報」にとどまる。法テラスは資力基準などの条件を満たせば無料相談を受けられ(法テラス公式によれば1回30分・同一問題3回まで)、さらに弁護士費用の立替も利用できる場合がある。ここで得られるのは「法的支援そのもの」だ。弁護士会の無料相談は資力を問わない窓口を持つ地域もあるが、予約と対面が基本になる。

なぜ違うのか(ひとことで)
AIは「調べて整理する」ための道具であり、法テラスや弁護士会は「あなたの代わりに動いてくれる人」への入口だ。だからこの二つは比較して一方を選ぶものではなく、順番に組み合わせて使うものと考えたほうが実態に近い。
AI弁護士は本当に無料なのか
AI法律相談チャットの多くは、登録も支払いもなく使い始められる。この無料の背景には、業界の善意というより法律上の構造がある。
無料の理由は「善意」ではなく法律の構造
弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で他人の法律事件を取り扱うこと(いわゆる非弁行為)を禁じている。だから多くのAI法律サービスは「無料の情報提供」という形をとる。無料だから期待できない、のではなく、無料である理由そのものが、AIが有償の法的助言をしていないことの裏返しになっている。
弁護士法の条文は次のように定めている。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
弁護士法第72条(e-Gov法令検索)
この一文が、AI法律相談チャットが「相談」ではなく「情報提供」を名乗る理由の根拠になっている。
ただし「無制限に無料」ではない
実例として、LINE上で動く法律チャットボットや大手ポータルのチャット法律相談には、「1日5回まで」といった利用回数の上限を公開情報として示しているサービスがある(あくまで一例であり、金額や条件はサービスごとに異なる)。有料プランを併設しているサービスもあるため、実際の料金や回数制限は必ず各サービスの公式ページで確認してほしい。本記事では個別サービスの金額そのものは扱わない。
AIの無料には「正確性の保証」が付いてこない
AIチャットの回答は弁護士による法律相談ではなく、正確性や最新性が保証されているわけではない。生成AIには、存在しない条文や判例をそれらしく作り出してしまう現象(ハルシネーション)が知られている。出典を確認できないAIの断定は、あくまで確認できていない断定にすぎない、という前提で読んでほしい。
法テラスの「無料」— 条件・回数・中身
無料のAI法律相談で状況を整理したあと、多くの人が次に検討するのが法テラス(日本司法支援センター)だ。ただし法テラスの「無料」は、AIの無料よりも構造が複雑で、業務ごとに条件が異なる。
3つのサービスを分けて理解する
法テラスは1つの窓口に見えて、性質の異なる3つのサービスを提供している。
- 情報提供 — 制度や相談窓口を案内するサービス。資力を問わず誰でも利用できる。
- 無料法律相談(民事法律扶助) — 弁護士・司法書士による法律相談。ただし条件がある。
- 費用の立替 — 弁護士費用を法テラスが立て替える制度。立て替えたお金は、あとで返済する。
この3つを混同すると「法テラス=誰でも無料」という誤解が生まれる。実際に条件が付くのは②と③であり、①はAIの情報提供に近い性質を持つ。
無料法律相談の条件と枠
②の無料法律相談を利用するには、収入・資産が資力基準以下であることと、民事法律扶助の趣旨に適することという条件を満たす必要がある。法テラス公式サイトによれば、相談は1回30分、同一の問題について3回までが無料の枠で、3回分をまとめて1回にすることはできない。対象は民事・家事・行政に関する問題で、刑事事件は対象外となる(刑事事件は弁護士会などの窓口を利用する)。この回数・時間の枠も改定される可能性があるため、最新の運用は法テラス公式サイトで確認してほしい。

対象外となる代表的なケースは次のとおりだ。
- 刑事事件に関する相談(弁護士会などの窓口を利用)
- 法人・団体からの相談
- 適法な在留資格を持たない外国人からの相談
- 資力基準を超える収入・資産がある場合
資力基準(目安・法テラス公式および政府広報より)
法テラス公式サイトと政府広報オンラインが示す資力基準の目安は次のとおり。手取り月収額(申込者と配偶者の合計、賞与を含む)で判定する。
| 世帯人数 | 収入基準(一般地域) | 収入基準(生活保護一級地) | 資産基準の目安 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 182,000円以下 | 200,200円以下 | 180万円以下 |
| 2人 | 251,000円以下 | 276,100円以下 | 250万円以下 |
| 3人 | 272,000円以下 | 299,200円以下 | 270万円以下 |
| 4人以上 | 299,000円以下(1名増ごとに+30,000円) | 328,900円以下(1名増ごとに+33,000円) | 300万円以下 |
家賃や住宅ローンを負担している場合は、世帯人数や地域に応じて一定額が収入から控除される。この基準は改定されることがあるため、申し込み前に必ず法テラス公式サイトで最新の数値を確認してほしい。

「立替」は無料ではなく、返すお金
③の費用立替を利用するには、資力基準に加えて「勝訴の見込みがないとはいえないこと」「制度の趣旨に適すること」も必要になり、合計3条件を満たす必要がある。政府広報オンラインによれば、立て替えられた費用は原則として毎月10,000円ずつ、または5,000円ずつの分割で法テラスに返済していく。ただし利息は発生しない。生活保護を受給しているなど一定の事情がある場合には、償還が猶予・免除されることもある。返済額や免除の条件も変わることがあるため、契約前に法テラス公式サイトで最新の内容を確認してほしい。
ここが最も誤解されやすいポイントだ。「法テラス=タダで弁護士がつく」のではなく、「法テラス=無利息で弁護士費用を立て替えてくれる」というのが正確な理解になる。
使い分け — AIで整理し、法テラス・弁護士会で動く
AIと法テラスは対立する選択肢ではなく、時間軸でつながる一連の流れとして使うと最も効率がいい。目の前の問題に応じて、リーガルAIからどこへ進むかを整理しておくと、実際の相談がスムーズになる。

AIで整理してから相談窓口へ向かう、5つのステップ
- 何が起きたか、時系列で書き出す(日付・相手・金額など)
- AI法律相談チャットに状況を伝え、関係しそうな制度や用語を洗い出す
- 手元にある書類(契約書・通知書・メールなど)を整理する
- 資力基準に該当しそうか、法テラス公式サイトで自分の条件を確認する
- 30分の相談枠に向けて、聞きたいことを3つ以内に絞る
AIが向いている場面
次のような状況では、AIによる整理が特に効果を発揮する。
- 深夜に不安で、今すぐ誰かに相談できない
- 何が問題なのか、まだ自分でも言語化できていない
- 専門用語の意味がわからず、相談の前提を理解したい
- 弁護士に相談する前に、自分の状況を整理しておきたい
- 30分の相談枠で何を聞くべきか、あらかじめ決めておきたい
AIは、限られた相談時間を無駄にしないための「下準備」として最も力を発揮する。
すぐ人間に行くべき場面
一方で、次のようなケースはAIだけに頼るのは危険で、早い段階で弁護士や法テラスにつなぐべきだ。内容証明や訴状が届いている、期限が迫っている、相手に代理人(弁護士)がついている、金額が大きい、あるいは刑事事件に関わる場合がこれにあたる。これらは判断のタイミング自体が結果を左右するため、AIによる情報整理だけで済ませるべきではない。
条件に合わないときの第三の道
法テラスの資力基準を満たさない場合でも、選択肢がなくなるわけではない。各地の弁護士会が実施する無料法律相談があり、分野や地域によって内容は異なるものの、資力を問わない窓口を持つ弁護士会も少なくない。日本弁護士連合会のサイトから、地域の弁護士会の相談窓口を探すことができる。
弁護士会の無料相談を予約する前に、次の点を確認しておくとスムーズだ。
- 対応している分野(離婚・相続・労働など)に自分の問題が含まれているか
- 資力要件があるかどうか、窓口ごとの案内を確認する
- 予約方法(電話・オンライン)と相談日
- 相談時間の目安と、追加で弁護士に依頼する場合の費用感
